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1st PLACEの村山久美子社長と平行四界の李迪克CEOにインタビュー

2017年7月21日、中国上海のメルセデスベンツ文化センターにて、BILIBILI MACRO LINK – VISUAL RELEASE 2017(ビリビリ・マクロ・リンク – ビジュアル・リリース2017。以降、BML VRと書きます)が開催されました。
幸運にも、この機会にVNN中国チームは、1st PLACEの村山久美子社長と、平行四界の李迪克(リ・ディク)CEOにインタビューすることができました。BML VRの終了後、私達はインタビューを行い、UGCモデル(UGC: User Generated Content, ユーザー作成コンテンツ)とPGCモデル(PGC: Professionally Generated Content, 企業や組織が生成したコンテンツ)の関係についてお話を頂くことができました。

 

VNN:お二方の今回BML VRコンサートのご感想を伺ってもよろしいですか?

村山久美子社長(以降、村山):今回のコンサートにお招きいただき、非常に光栄に感じています。ちょうど昨年のこのイベントでは、IAのボイスソースであるLiaがBMLに出演しました。その時からIAもいつかこのメセルデス・ベンツ・アリーナのステージに立つことができればいいな、と考えていました。それが一年後にもう実現できたことは非常に嬉しかったです。そして中国にこれだけのバーチャルアイドルが存在していたということにも、非常に驚きました。

李迪克CEO(以降、李):実は自分たちにとって今日の星尘(シンチェン)のステージはとても残念で悔しい経験でした。ファンの方々は期待を持って遠方から遥々お越しくださったのに、様々な原因が重なって、星尘は1曲しか歌えませんでした。当初の計画では2〜3曲ほどパフォーマンスするつもりでしたが、限られたスケジュールの中にクオリティー重視で作業したため、最終的には「星之伊始」この一曲の映像しか完成できませんでした。ただそれも完璧とは程遠いレベルでした。今回は星尘の記念すぺき初ステージですので、楽曲群の中から慎重に選んだ一曲です。ただこの曲はテンポが乗り辛く、ファンの方々はちょっと困惑してたかもしれません。初めてのステージとして、クオリティー的には残念な結果でしたが、これを経験に、年末のワンマンライブを成功させて、ファンの方々に答えたいと思います。

 

VNN:お二人にとって、バーチャルアーティストはどのような存在でしょうか?

村山:1st PLACEはもともと音楽プロダクションであり、音楽アーティストやクリエイターが所属する会社です。生身の人間とバーチャルという点を除いてIAも全く同じで、私達にとって会社の大事なアーティストの1人です。
元々IAを開発した当時、私はVOCALOID文化というものに対してほとんど知識がなく、当然のようにアーティストのブランディング、プロデュースはマネジメント(公式)側がしていくものと認識していた為、結果的にIAは他のVOCALOIDキャラクターとは全然違うスタートを切ることとなりました。
後に徐々にメジャーの音楽シーンと全く成り立ちが違うマーケットと文化があることを知っていくことになるのですが、ニコニコ動画などを通してクリエイターが自由に作品を発表し、人々にダイレクトに評価してもらい、広めていけるこの仕組みは素晴らしいと思いました。そして自らの力で活動をされている才能あるクリエイターの方々を創作の一躍を担えるツールとして、IAを使ってもらえることに意義を感じました。
一方で、そのツールとしての役割とは全く別軸で、IAは魂を持った一人の音楽アーティストとして存在しています。

VNN:つまりIAは、VOCALOIDのソフトウェアと、1st PLACEのアーティストという、2面性をお持ちということですね?

村山:そうですね。名前が同じでも、本質は全く違います。

VNN:李さんはどのように考えますか?

李:私は高校の頃にVOCALOIDに出会い、大学に入ってから創作活動を始め、意気投合する仲間もたくさんできました。しかし交流の中で、中国では才能のあるクリエイターはたくさんいるのに、その価値を上手く引き出せるメネージメント体制が存在しないことに気付き、そこで自分の手でこの体制を築き上げたいと考え、これが今の平行四界の原点です。
「星尘」というのは、この生態を象徴したネーミングです。私たちクリエイターもユーザーも、一人ひとりはちっぽけな存在でしかないが、小さな星屑でも数が集まれば、膨大な星系になります。星尘はまさにこの思いを込めた命名です。平凡な存在でも、みんなで集まれば無限大の可能性が広がります。私は中国国内で才能のあるクリエイターのために、ブランディングやマーケティング面でサポートできるプラットフォームを作りたく、平行四界を作りました。

村山:私は李さんの理念にとても賛成です。1st PLACEは今年で創立14期目になりますが、その前、前職では10名近いクリエイターのマネジメントに従事していた時期がありました。当時のクリエイターにおける環境は今とかなり違っていて、彼らにどんなに才能やプロデュース力があり実績を作っても、創作者の貢献が認めてもらえる機会に恵まれることは稀で、一過性の制作仕事で終わってしまうことが多かったんです。私は彼らの才能を裏方で終わらせずに、表舞台で成功できる環境を作れないか?と思うようになり、それが1st PLACEを創業する一つの目的となり、その理念は今でも貫いています。IA PROJECTはまさにこの理念のもとでスタートしたレーベルであり、創作ツールとしてのVOCALOIDを通じて、プロを目指すクリエイターを支援していくことを目的にスタートしました。

 

VNN:IAも星尘もPGCモデルで主導していますが、お二方はPGC(*1)とUGC(*2)の関係をどのように考えますか?この先はどのようになると思いますか?

*1:PGC, Professionally Generated Content, 企業や組織が生成したコンテンツ
*2:UGC, User Generated Content, ユーザー作成コンテンツ

村山:実はPGCという言葉は今日初めて知りました。当初VOCALOID文化に対する認識が浅かったこともあり、UGCが主流である文化のなかで、独自のビジョンに基づいた活動を展開していった結果、知らぬ間に暗黙の掟?みたいなものに抵触してしまうこともあり、界隈の方々からお叱りを受けたり叩かれましたこともありました。しかしその頃には、自分なりの文化に対する敬意と文化継承の信念が明確にありましたので、決してブレることなくここまで進んでこれたことが今に繋がっていると思っています。
少し脱線してしまいますが、IA PROJECTは、VOCALOIDのクリエイターの中でも、本気でプロを目指している方々の力になりたいと思い支援活動をスタートさせました。しかし当時の文化ベースは、コミュニティーの中での独自な慣習とルールがあり、創作を発表する場として非常に良いプラットフォームである一方で、プロを目指す方にとってはこういったルールが逆に創作の枷になってしまうこともあるように感じていました。私達は、ここで生まれたクリエイティブは、ボカロのコミュニティーだけのものではなく、もっと広く一般の方とシェアするべきだという信念のもと活動をしてきました。UGCというのはとても素晴らしい文化ですが、狭い囲いの中だけでは文化として広まらないと思うのです。広がるどころか衰退していってしまうと。同じように、クリエイターのセルフプロデュースによってヒットが生まれるスタイルは本来あるべき姿ですし素晴らしいことだと思いますが、同時にマネジメント側がブランディングのもとに様々な分野のクリエイターと楽曲を共に作り上げる進め方は、VOCALOIDの文化継承の上でも必然だと思っています。当時はこうした制作スタイルに対しても反発を受けることも度々ありましたが、それが今ではPGCという言葉にまで定着したということを今日知ることができ、少し嬉しい気持ちです。

李:私たちはUGCの領域からPGCモデルになったので、1st PLACEのアプローチとは逆と言えますね。私たちはもともと同人サークルとして発足し、活動を通して才能のあるクリエイターたちが多数加わり、現在のチームとなりました。この方式のメリットとして、最初から星尘のファンになると、クリエイターの作品を通して星尘のファンになるという、2つのソースからファンベースが構成され、このおかげて星尘が活動開始してすぐ大量なファンを集めました。その後サークルを会社に改組し、サークルメンバーもほとんど会社の職員、クリエイターとして契約しました。会社にしたことで、今までよりもっと密な連携が取ることができたのが、メリットの一つです。もちろん、ユーザーから商業化反対などの声もありました。しかし現状中国ではUGCを1つのマーケットとしてサポートできるだけのインフラはできておらず、クリエイターの絶対数もまだまだ少ないです。会社の事業を継続するために、私たちUGCベースの創作活動を行う一方で、PGCという形で星尘にキャラクターイメージを与え、マーケティングやブラディングを行いました。幸い、ファンお方々の理解をいただいており、特に大きなトラブルにはなりませんでした。
そもそも私たちはクリエイターを束ねるために発足した会社ですので、どちらかというユーザーやキャラクターIPのことよりもクリエイターを第一に考えて おります。この思想を貫くプロジェクトの一環として、これからは歌い手によるオリジナルアルバムを企画したいと考えています。クリエイターにVOCALOID以外の声を提供する一方で、歌い手にもオリジナルを歌えるチャンスを与えたいと考えて居ります。

VNN:では今後はVOCALOIDから離れ、もっと広いフィールドで創作活動をしてもらう予定でしょうか?

李:それはクリエイター本人次第ですね。ずっとVOCALOID専念したければ、それも良いし、他の領域をトライしたければ、会社としてもそれをサポートしたいと思います。実は私たちのチームは他のところでゲームやアニメへの楽曲提供などの活動も行っており、今もドラマの主題歌の話がきております。
私はまずクリエイターを経済面からサポートして、生計の問題を解決し、その上で自分たちが好きなものを作ってもらいます。会社はそれを使って事業を展開する、というようなプラットフォームを造るのが私の夢です。

VNN:1st PLACEのIA PROJECTもこのような、IAを中核としたブランド/レーベルなんでしょうか?

村山:いえ、IA PROJECTとIAは別物です。やはり皆さんIA PROJECTに対して少し誤解を持たれているようなので、この場を借りて説明致します。
元々IA PROJECT自体はIAを広めるためではなく、VOCALOIDで創作活動をしていて、かつプロを目指すクリエイターの支援活動やサポートを行うために発足したプロジェクトです。ただ、当時は1st PLACEが自由に使えるソフトはIAしかなかったので、必然的にIAをツールやアウトプットにした支援活動が主になったのも事実です。

IA PROJECT出身のじんや石風呂といった当時のボカロクリエイター達も、もともと彼らと知り合ったきっかけが、IAのベータ版のモニターを依頼したことからであって、IA PROJECTが彼らにIAの使用を積極的に勧めた訳ではないのです。
彼らの音楽を受け取って、純粋に感動しましたし才能を感じた中で、彼らがプロのミュージシャンを目指していることを知り、ならば応援したい!という思い、そして彼らの夢の実現の上で私達にできるサポートや支援が明確に見えていたことから、IA PROJECTは実働していきました。

たまたま出会いのきっかけがIAであり、支援のツールの一つとしてIAのソフトウェアを用いた結果、とてもクオリティーの高い作品ができて、それがクリエイター本人とIA双方の代表作になりました。これは自然な流れで起きたことで、創作はあくまでクリエイター本人が決めることですから、当たり前のこととして、私たちが彼らの日常的な創作をIAに制限するということなど一度も考えたことも実行したこともないですし、もっというとそんな制約は誰のプラスにもならないと思っています。

ただ、同時に私はIAのプロデューサーでもあるので、IA側の立場から、彼らに「IAへの楽曲提供」を依頼することは当然あります。これはクリエイター名義の作品とは全く別軸で、IAとして新曲を書いてもらうという「発注」です。大多数の方が、私達がクリエイターにIAを使うように指示をしていると思われているみたいですが、IAへの楽曲制作の依頼と、彼ら自身の創作活動とは全く別物になります。IA PROJECTの名称が誤解のもとかも知れませんね。

李:その点においては私たちも似ていると思います。我々は所属するクリエイターの創作活動を応援すると同時に、星尘の公式企画として皆さんに楽曲を発注することもよくあります。多分他のVOCALOIDキャラクターも今ではこのような方針をとっていると思います。

 

VNN:先日IAさん本人のインタビューでも様々なアーティストやクリエイターとコラボしてきているとおっしゃいましたが、1st PLACEと平行四界2社の間でコラボする可能性はございますでしょうか?

村山:先ほど星尘の誕生の背景を伺って、そのような手法、発想があること、とても興味深く感じました。私達とある部分では近い方針のようで、それを実現するためのアプローチは違いますね。例えば私には都度、IAがその時必要としている楽曲のイメージがあり、そのコンセプトにフィットするクリエイターの方を決めて楽曲提供を依頼しますが、星尘の場合はどちらかというと一つの集合体の中でコンセプトに基づいて楽曲制作を行っていますよね。そこでまずもう少し詳しく知りたいのですが、もし星尘とコラボを行った際は、必ずチームメンバーの中で制作は完結されるのでしょうか?

李:いいえ、特にそのような制限を設けていません。ファンの方々が喜ぶものであれば基本的には何でもOKです。星尘のキャラクターイメージと平行四界に所属するクリエイターの間は一つのセットというわけではなく、お互い独立した存在です。あくまでクリエイターたちが星尘のために作った楽曲群の中からその都度相応しい楽曲を選択し、展開していく形を取っています。
ただこのやり方も少々行き詰まっていて、「自由放任主義」は生産性が悪く、思ったほどハイクオリティーのものが出てこないのですね。やはりある程度の全体の方針を決めてから制作を始めないと難しいですね。先ほどのライブもうちのクリエイターを連れてきてライブを見ながら「この場面でこのような楽曲を使ったらいいな!」などの話をしていました。

村山:なるほど。少し話が変わりますが、日本においてボカロはすでに一定の認知がなされていますが、ヴァーチャルアーティストとなると、一般のマーケットではまだまだ理解が浅く、アニメキャラクターと同じ種別と解釈され、プロジェクトが頓挫する場面も多々ありました。中国ではこういったバーチャルアーティストのマーケットの実情はどんな感じなんでしょうか?

李:中国は今二次元文化を始めとするサブカルチャーの高速発展期の真っ最中にあり、例えばニコニコの真似ごとで始まったBilibili動画も今や本家を凌ぐぐらいの規模になりつつあります。文化発展のレベルでいうと、まだまだ日本の後追いのポジションにあります。バーチャルアーティストに対する認知度や受け入れ度の伸びつつありますが、人口ベースの割合でいうとまだまだ日本ほどの高さにはなっておりません。ただ中国の一つ特徴として、その人口の多さが、あらゆることを驚愕するほどのスピードで成長させることができるのは、独自の優勢だと私は思っています。

村山:なるほど、そういうことですね。ちょっと先ほどのコラボの話に繋がりますが、私の性格上、やるからにはやはり既存概念を覆すぐらいのものを作りたいんですね。日中両国のアーティストコラボはそんなに珍しいことではないですが、国を越えたバーチャルアーティスト同士のコラボは新しいですね。そしてそれがサブカルファンのみならず、一般のリスナーの方々にも驚きと刺激を与えられるようなコラボ作品が作れると素晴らしいですね。

李:そうなんですね、とても素晴らしい考えだと思います。私たちとしても、IAさんとコラボすることで、ファンの方々を始め、皆さんに驚きと喜びを同時に送りたいですね。この間行った「IA × 星尘」アーティスト本人の対談は、中国のSNS上でも非常に注目を受け、これを生かした二次創作物もたくさん発表されました。やはりファンの方々もIAと星尘のコラボを期待しているようです。

VNN:なるほど、それは非常に期待できますね!IAと星尘のコラボ企画の実現がとても楽しみです!お二方とも、本日は長らくお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

村山、李:ありがとうございました。

 

聴き手:VNN中国チーム(Fran, Liaair)
一部日本語訳、校正:NAT (@nat0468)
インタビューにご協力頂いた1st PLACEと平行四界に感謝いたします。

About NAT

横浜のボカロファンです。VNN Japaneseのメンバーとして、日本語記事の校正や、イベントのレポート記事作成を担当します。ボーカロイド関連イベントのカレンダーサイト「VOCALENDAR」 http://vocalendar.jp/ の編集メンバー。ボカロ関連ニュースサイト「週刊ボカフロ」http://vocafro.hatenablog.com/ の編集者。I'm a VOCALOID fan from Yokohama, Japan. I serve as a proofreader of VNN Japanese articles, and make report articles. I'm the one of editing members of the calendar site of VOCALOID events, VOCALENDAR http://vocalendar.jp/ , and the editor of "Weekly Vocafro", VOCALOID news site http://vocafro.hatenablog.com/ .

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